未来塾通信65


日本人は英語学習の第一歩でつまずいている



■前回の続きです。英語では、自分の話している「個体」が、話を聞いている相手が考えている「個体」と一致していることが重要だと述べました。あたりまえですね。


例えば、「けさ、リンゴを食べた」というときのリンゴと「リンゴ、ありがとうね。おいしかったよ」というときのリンゴは、英語では a や the を使って厳密に区別されるということです。もちろん日本語でも区別しています。そうでなければ、コミュニケーションが成り立ちません。ただその差が、書いても、発音しても表面には現れません。日本語では、どちらも「リンゴ」ですね。

まとめると、以下の二つになります。

1:お互いが考えている個体(リンゴ)は一致していない、どれでもいい場合は a や some などを使う。

2:お互いが考えている個体(リンゴ)は一致していないと困る、どれでもいいわけではなく、特定されていなければならない場合は、the などを使う。(など、というのは人称代名詞の所有格やthis, that などで特定できるからです)

英語で表せば、

1:I ate an apple this morning.

  I ate some apples this morning.

2:Thanks for the apple. It was delicious.

  Thanks for the apples. They were delicious.

となります。ここで重要なことがあります。中高生には、ぜひ理解してもらいたいことです。いま、「特定されていなければならない場合は、the などを使う」と言いましたが、「特定されたか、特定されていないかは相手による」ということです。


具体例で考えてみましょう。


あなたが(名前をサトシとしましょう)家で勉強しているところに、友人のトムがやってきます。トムはあなたがこの前図書館で本を借りたことや、レポートを書いていることなど知りません。何をしていたのか尋ねられたあなたは、I was reading a book I borrowed from the library the other day. と言うしかありません。お互いの間で、その本は特定されていませんからね。


そこへ30分ほどしてケイトがやってきます。ケイトは数日前、あなたといっしょに図書館でレポートのための本を探しています。そこで、あなたはI was reading the book I borrowed from the library the other day.と言います。そして、ケイトはあなたに、How’s the report coming, Satoshi? と尋ねます。


それを聞いたトムは困惑します。なぜなら、ケイトが the report と言ったからです。3人で話しているのに、お互いが考えている(想像している)個体(この場合はreport )は一致していません。そこでトムは、What report is that? と確認を求めないと気が済まないのです。そこであなたはトムにレポートについて説明しなければなりません。仕方ないですね、the report と言ったのですから。関係代名詞を使って詳しく説明してあげて下さい。


さて、2人が帰り支度を始めたとき、あなたはケイトに言います。I already returned the book to the library. と。これを聞いたトムは、またまたWhat book is that? と聞かずにはいられなくなりました。トムはいつになったら帰ることができるのでしょうか。あなたが the を使うのをやめればいいのです。とまあ、これは冗談ですが・・・。


さて、念のために復習しましょう。コミュニケーションの場では「特定されたか、特定されていないかは相手による」ということをしっかり理解して下さい。


な〜んだ、その程度のことか。そんなことは常識じゃん、「日本人は英語学習の第一歩でつまずいている」なんて、タイトル大げさじゃね?と思っているあなた。頼もしいですね。でも今回のブログは前回の復習でした。僕が言いたいのは次のことです。もしかしたら、あなたは以下のように考えているのではありませんか。問題形式で質問しますね。

以下の英文で正しいものには○、間違っているものには×をつけよ。

1:This is pen.

2:These are pen.

3:This is a pen.

4:This is my pen.

5:These are pens.

ちなみに、こんな問題はテストには絶対出ません。正解は、「すべて正しいとも言えるし、すべて間違いだとも言える」です。ほらほら、そこでひっくり返っている君。だから言ったのです。「日本人は英語学習の第一歩でつまずいている」とね。

なかなか「前置詞+関係代名詞」の解説にたどり着けませんね。でも関係代名詞もしょせんは名詞を他の名詞と区別したり、後で情報をつけ加えたりするのですね。その名詞が相手との関係で、つまりコミュニケーションにおいて、特定されるかどうかという問題なのです。解説は次回に譲ります。