未来塾が32年間守ってきた方針です。

1, 授業の質を確保するために、個人塾のスタイルを崩さない。分教室を作らない。外部から講師を雇ったこともなければ、塾の卒業生に授業を任せたこともありません。「変化させてはいけないもの」と「変化させなければならないもの」を厳しく区別し、生徒と保護者の知性を信じることが未来塾の方針です。
2, クラスの人数は最大でも12人とする。個別指導は例外的なケースを除いてはしない。個別指導は一人当たりの単価を高く設定でき、経営上有利なので最近大はやりですが、同世代の仲間たちと知的な交流ができず、勉強方法を工夫する力がいつまでたってもつきません。その中身はほとんどの場合定期テスト対策で、大学生のアルバイトか、時給で雇った講師の使い捨てで成り立っています。戦後の経済成長を支えた優秀な技術者たちは、個別指導を受けていたのでしょうか。狭い教室に1クラス50人以上という劣悪な環境の中で勉強していたはずです。
3, 必要と思われる情報は提供するが、進学実績を売りにしない。私の塾にきて本当に実力がついたなと実感できる生徒は、5割くらいでしょうか。センター試験や全統模試で全国順位1桁台になった生徒がいますが、彼らは「まぐれ、まぐれ」と言っていました。私の授業と生徒の実力との因果関係を冷静に見れば、これが現実です。それでも、意味を納得しながら、自分の頭で考え、他との関連づけを行い、手抜きをしようとしなくなれば、実力が少しづつ付いてきて、大部分の生徒は自信のある表情を見せるようになります。ただやみくもに量をこなすのではなく、考えればなんとかなるという経験を積み重ねることを最も重視しています。
4, 定期テスト対策は、実力をつけるのに必要な範囲で行う。詳しくは、ESSAY「学力低下は塾のせい?」を、お読みください。間に合わせではなく、心ゆくまで何かをやる。他人の評価を気にせずに、自分で満足がいくまで何かをじっくりとやりとげる経験をすれば、成功体験が蓄積され、自尊心をもてるようになります。これは自我を育てるために必要なことです。通信教育のトレーニング教材や全国チェーンのプリントをやらせるだけの教室は、内容、方法、量がすべて決められており、試行錯誤の入り込む余地がありません。ここにあるのは教材をやるかやらないかという問題だけで、やれば好成績、やらなければ成績不振という関係しかありません。教科書ガイド、塾の予想問題、教師の作成した要点暗記集も同じことです。これでは自尊心が育つはずがありません。学習の方針を自分で考えれば,慣れないうちは当然判断ミスが起こり、無駄が出て準備不足という事態になりますから、試験の点が悪くなる場合があります。しかし、無駄を積み重ねなければわからないことや、見えてこないものがあるのです。成功は度重なる失敗に支えられています。試行錯誤の量こそが、やがて来るべき発見をかけがえのないものにし、自信と自尊心を生み出すのです。学習がこどもたちの精神的な成長に影響を与えるのはまさにこの瞬間をおいて他にありません。私が塾で生徒をほめるときは、こういった過程を踏んでいるときです。基礎の大切さがわかってくるのもこういった過程を経た後です。しかし、ここ数年、わからなさに耐えられるこどもが急速に減ってきています。以下に挙げるのは中学生の数学の問題ですが、問題を見てすぐあきらめる生徒が多くなっています。


現在、、かなり優秀な生徒でも上の問題を解くのに苦労しています。パターン化された、一度見たことのある問題でないと解けないような思考回路ができ上がってしまっているようです。普段の学習が試行錯誤とは縁がなく、「数学の勉強とは、意味がわからないまま、処理手順だけを暗記することだ」と思い込む人が増えると、そういった考えが次世代に転移する可能性がでてきます。親から子へ、教師から生徒へと。そして現実には、すでにかなり大きな規模で起こっています。