未来塾通信55


災厄の犬 3 - 大分・Y田ゼミ塾長氏 (2015:1:27)

■若い頃はただ直感で自分は教職と公職には向いていない、自由でありたい、とそれだけを考えていたように思います。ある程度歳をとって振り返ると、案外そういった直感の中に生き方の萌芽が含まれているのだと気づきます。財産・地位・名誉等には、全く興味がありませんでした。職業的に制度化されていないものの中にこそ、自分がやりたいことがあるのではないかと漠然と見当をつけていただけです。

結果的に、社会から見れば潜在的失業者、余計者とみなされる塾教師という職業に就いたわけですが、世間や会社のしがらみから離れたところで自由に生きるにはもってこいの仕事でした。社会的な地位や経済的な安定に頓着することなく、塾の教師という仕事を喜んで受け入れ、受け入れた以上はその中で悪戦苦闘することを覚悟したのです。


  ですから、政治についてあれこれ発言するのは、塾教師としての生業とは直接関係がないと思い、控えてきました。しかし、私たちの生活は、好むと好まざるとにかかわらず、政治によって大きく左右されます。特に、東日本大震災と原発事故は、私たちの世界観や生き方、さらには文明のあり方そのものに揺さぶりをかける歴史的な大事件だと感じました。いくら鈍感な私でも「これは日本の、いや人類の終わりの始まりなのではないか」という悪い予感に襲われ、しばし呆然としたのです。

この事故をなかったことにするのは不可能ですし、なんら影響も受けずに、これまで通りの生活を続けることができるとしたら、その方がどうかしています。そこで、遅まきながら、政治について自分の考えていることを発言しようと思いました。それが主権者としての最低限の義務だからです。


  『未来塾通信』に政治的発言が多くなったのは、世界中の子どもたちがテロの標的になったり、戦争に巻き込まれる事態をなんとかやめさせたいという、人間として当たり前で根源的な願いがあるからです。この願いは、ある種の人からは「脳内お花畑」として攻撃の対象にされます。そしてこの種の攻撃がリアリストの仮面をかぶって、マスメディアや御用学者から発せられると、さも正しいことのように感じられてくるのです。

その結果、私たちは「子どもを戦争に出したくないのはやまやまだけど、現在の国際情勢や日本の将来を考えると、そうも言ってられないのでは・・・」と、大義名分に軍配を上げてしまいます。そうなると、実際に自分の子どもが戦場で味わう地獄も、残された者の絶望や悲しみも、想像できなくなります。これは人間精神の退廃というほかありません。


  結果、「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる」という、2013年3月30日に発表された「日本維新の会」の「綱領」に拍手喝采を送る人々があちこちに登場してきます。

それにしても「日本維新の会」の人々は、こんな幼稚で意味不明の文章を書く能力しかないのでしょうか。主語や目的語が不明瞭で、読解するのは不可能です。いったい日本が「孤立と軽蔑の対象」に貶められているとは、どういう状況を指して言っているのでしょうか。少なくとも私は、日本国憲法が理由で恥ずかしい思いをしたり、孤立感を覚えたり、軽蔑されていると感じたことはありません。「日本維新の会」の橋下徹氏については後日改めて批判したいと思います。


  今回は、大分の春日町小学校の近くで塾を経営しているY田ゼミの塾長氏をとりあげます。上野丘高校に通う塾の生徒さんから教えてもらいました。ここで取り上げる必要はないくらい基本的な事実に無知で、感情にまかせて罵詈雑言を投げつける、単純でお人好しの人物であることがブログから読み取れました。しかし、Y田ゼミ塾長氏の発想が安倍総理の発想と酷似していること、そういった集団、いわゆる「ネトウヨ(ネット右翼)」と呼ばれている人たちが一定程度の影響力を持っていることから、ここで取り上げてみたいと思います。


早速、2015年1月17日(土曜日)の「Y田ゼミ塾長ブログ」を見てみましょう。

ブログのタイトルは『植村隆というバカ』です。


               〜悪質な捏造をした男、韓国の団体の義理の息子・植村隆〜

元・朝日新聞記者の植村隆(うえむらたかし)という男(北星学園非常勤講師)が、いまだに「日本軍が韓国で従軍慰安婦を強制連行した」と言い張ってる。この男の奥さんは韓国人です。そして奥さんの母親が、韓国の慰安婦の原告団の幹部だから、義理の母親の言うことを全部信じたくて、とにかく日本を馬鹿にして韓国を応援したいのだろう。左翼の朝日新聞の顔・植村隆。韓国は必ず「金出せ。金出せ。」と日本に迫ってくる。この植村というバカは、その韓国の協力者です。おい、植村!!証拠を出してみろよ!!証拠も出せないインチキジャーナリストがえらそうなことをいうな!!


  私はこのブログを読み、愕然としました。ネットを使い、時系列で事実を確認すれば数時間で真実がわかることです。一旦差別主義的なイデオロギーのとりこになれば、そのフレームからはずれた事実は、全く見えなくなってしまうのだと思います。Y田ゼミ塾長氏は受験指導についてはある程度の経験はお持ちのようですが、知性からは最も遠い人物です。自分で事実を確かめることもせず、それゆえ簡単に洗脳される人物だということは想像していましたが、ここまでメディアリテラシーが低いとは思ってもいませんでした。

植村隆氏が『いまだに「日本軍が韓国で従軍慰安婦を強制連行した」と言い張ってる。』などというのは大嘘です。それこそ、「証拠を出してみろよ!!」と言いたくなります。Y田ゼミ塾長氏は、週刊文春の2014年2月6日号の記事を読んだネトウヨ諸氏が、ネットに書き散らしたことをそのまま信じ込み、朝日新聞のみならず韓国に対する罵詈雑言を感情に任せて投げつけています。

ある特定の個人を憎むというのなら理解できますが、国家に対してこれほどあからさまに憎悪するということが私には到底理解できません。まったくさえない日常の中から自分自身の思想を練り上げることをせず、自らの存在理由を国家に重ね合わせ、自我を国家の規模にまで肥大化させた結果がこの記述となっているのです。

このレベルですから、Y田ゼミ塾長氏がいくら日本を素晴らしい国だと持ち上げても、相手にされません。こういう人物が社会の中で増えることで戦争への準備が整っていくのです。政府がいくら戦争をしたいと思っても、国民がそれを支持しなければ不可能です。戦争を起こすのは無知で善良な人の心です。忘れてならないのは、政治の本質は、無知と善良さに付け込む羊の皮をかぶったオオカミだということです。


  当の植村隆氏は、2015年1月9日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見(YouTubeにアップされていますから、Yゼミ塾長氏はぜひ見るべきです)を開き、「私は捏造記者ではない。不当なバッシングに屈するわけにはいかない」と語り、植村氏を「捏造記者」と報じた文藝春秋と西岡力・東京基督教大学教授を名誉毀損で提訴したことを明らかにしました。「証拠をだしてみろよ!!」と言われるまでもなく、中学生でもわかる明らかな証拠を提示しています。小林節氏をはじめとする170人の弁護士が彼を支持するのも当然です。イデオロギーの問題ではなく、単純な事実認定の問題ですから植村氏が勝訴するのは時間の問題でしょう。


  事実すらまともに追えず、日本語の読解力すら怪しくなっている記者や大学教授に対する批判はひとまず置いておきます。私がここで問題にしたいのは、植村氏と朝日新聞を同一視し、ここぞとばかりに感情的なバッシングを投げつけるY田ゼミ塾長氏のような存在です。

週刊文春の記事は植村氏の個人名を出した上で、氏が2014年3月に朝日新聞を退職し神戸の松蔭女学院大学の教授に就任することにも触れていたのです。その結果、大学側に多くの抗議が寄せられ、植村氏は大学から教授就任を辞退するよう求められました。さらに、植村氏が現在非常勤講師を務める北星学園大学にも脅迫の手紙が繰り返し届いているほか、植村氏の個人情報や家族の顔写真などが無断でネット上に晒され、脅迫や無言電話などが後を絶たない状況に追い込まれたのです。

忘れてならないのは北星学園大学の対応です。「学生を傷つけるぞ、放火するぞ」といった脅しに屈せず、断固として思想信条の自由のために大学の存在をかけて闘いました。消費者や保護者の顔色ばかりうかがっている企業や学校経営者を見れば、これがどれほど勇気ある行動かわかると思います。

ネトウヨレベルの週刊文春の記事にあおられて、Y田ゼミ塾長氏のやっていることはヘイトスピーチそのものです。上記のブログ記事を読めばこのことは明らかです。(追記:共同通信2015/02/03によれば、2月6日〜8日に予定されている北星学園大学の一般入試の会場などで、受験生や教職員に対して危害を加えるとの内容が記された脅迫状が届いたとのことです。ここで書いたとおり人並みの思考力もない人間が、確信犯的に自分の考えこそ正しいと思い込んだ末の行動でしょう。この精神的な未熟さ・幼稚さにはあきれるばかりです。マスメディアはこの事件をもっと大々的に報道すべきですが、そこまでの見識を持ったマスメディアはもはや存在しなくなったようです。「テロとの戦い」を声高に叫ぶのであれば、まず国内のこの種のテロをこそ徹底的に取り締まるべきです。)

  さらに、2012年9月の「Y田ゼミ塾長ブログ」は

「尖閣にやってくる中国人を射殺すべきだ!尖閣にやってくる中国漁船団を射殺しても構わないと思う。わが日本の領土を中国人のボケどもが横取りしようとしている。今回、1千隻だか1万隻だか知らないが、中国船が尖閣にやってくるなら、日本の警備隊の警告を無視した瞬間に、その中国人を射殺するべきだと思います。」


 と主張しています。私が今回Y田ゼミ塾長氏を取り上げようと思った主な動機はこの記述にあります。少なくとも、前途ある若い人々を指導する立場にある人間が「中国人を射殺すべきだ!」とブログで公言するのはいかがなものでしょう。それともY田ゼミはそういった思想を持った若者を育てる塾なのでしょうか。私はどんな理由があれ、人間が人間を殺してはならない、すべての思想の根拠は、「殺すな!」からだ、と小声で時々生徒に話しかけています。


  さらに、昨年暮れの衆議院選挙の前日、12月13日(土曜日)の「Y田ゼミ塾長ブログ」のタイトルは、なんと、「連合大分の組織票を私が切り崩しています」です。少しびっくりします。そして、「アベノミクスってすごいんです。経済に詳しい人ならわかりますよね。その国の経済状況を見るには株価を見ればわかると言うことを」と続きます。これだけで脱力しそうになりますが、少しだけ反論しておきます。


  アベノミクスは自国通貨の下落(円安)を誘導していますが、これは、一国経済を海外の投資家に対して、大盤振る舞いすることです。大バーゲンセールです。あなたの大嫌いな、中国人民元の対円レートが、安倍政権が発足してからの2年間で約2倍の水準に上昇しているのです。このことは、中国人民元の購買力が2倍に跳ね上がっていることを意味します。その結果として、中国マネーが怒涛の如く日本に襲い掛かり、日本の重要な経済資源が中国に流出する事態を招いているのです。中国だけではありません。ドル通貨圏の大資本が日本の不動産、優良企業の所有権を次々に獲得する事態が広がります。さらに、カジノ構想で日本を賭博場にして中国資本を呼び込もうとする政治家もいるのです。経済のことしか頭にないのでしょう。集団的自衛権行使を容認し、米国が創作する戦争に日本が加担する状況を作り出す一方で、日本が中国に買い占められる状況を作り出しているのが安倍政権です。これで国を守ることができるのでしょうか。これは Yゼミ塾長氏の言う「売国政策」ではないでしょうか。


  経済に詳しいらしいY田ゼミ塾長氏が、ブログ上で、原発の再稼動を熱烈に支持するのもうなずけます。原発が稼動しなければ年間3兆円の国富が流出すると、原発推進派と同じことを言います。地震と火山大国の日本では、原発再稼動の必要性も必然性もまったくありません。それを経済的な理由(電力会社の都合)で押し切ろうとしているのが安倍政権です。狂気の沙汰です。これほど道徳的に退廃した政権は類を見ません。中国に対して好戦的な発言をしている人たちは、尖閣諸島では「国土を守れ!」と絶叫します。しかし、原発事故で国土が失われるリスクにまったく関心を示しません。放射能汚染で国土の一部を半永久的に失う事態を招いたことも眼中にないのです。なぜかくも偏頗な人間たちが登場したのでしょう。ひとことで言えば、市場が道徳を締め出したからに他なりません。


  Y田ゼミ塾長氏は原発のコスト計算のからくりも知らずに「年間3兆円の国富が流出する」と言いますが、昨年5月の大飯原発再稼働差止め判決をご存知でしょう。私はこの判決こそ、日本の歴史と文化に根ざした全うな判決だと考えています。『さいごは金目でしょ』の自民党・安倍内閣を熱烈に支持するY田ゼミ塾長氏には、「脳内お花畑」としか聞こえないでしょうが。


「被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。
被告の主張においても、本件原発の稼働停止による不都合は電力供給の安定性、コストの問題にとどまっている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」