未来塾通信42


闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう

■3月9日は中学3年生の最後の授業だった。ここ数年は、試験直前の緊張を和らげてもらおうと、妻が和菓子を準備し、抹茶を立てて受験生の激励会を開いている。今年は、お茶会ではなく、紅茶と、妻が焼いた苺のケーキを食べてもらった。その後、私のごく短いスピーチ。冗談を交えながら最後まで淡々と授業をし、入試を一大事だと感じさせないようにつとめる。既に高専に合格している2人も混じっている。授業をしながらいろいろなことが思い出されるが、センチメンタルな気分に流されることはない。合否を報告することを忘れないように念を押し、授業後、「今まで通ってきてくれてありがとう。がんばれよ!」と、激励と感謝の意味を込めて生徒一人ひとりとしっかり握手する。試験前日に、必勝の鉢巻を巻き、こぶしを突き上げてシュプレヒコールを上げるのは、私の塾には似合わない。1週間ほど前に渡した、「保護者の皆さんへ」と「生徒の皆さんへ」をもう一度読み直してくれれば、きっと落ち着いて受験できるよ。

中学を卒業して就職しなければならない子どもたちがいた時代、あるいは不合理な社会的因習によって機会の平等が阻まれていた時代に、人々が耐え忍ばなければならなった不遇感を想像すれば、何の苦労もなく恵まれて育った今の子どもたちは幸せだと思う。これから先いくつもの運命の試練を受けなければならない子どもたちが、15歳という人生の節目で、学力による選別という試練を経験しておくことは、むしろ必要だと思う。子どもがはっきりとした目的意識をもてない時期に、中学受験へと駆り立てることの不毛さとくらべれば、高校入試は子どもたちにとって必要な通過儀礼だとさえ言える。

さて、今年、中学3年生と高校3年生の最後の授業で聴いた曲。中島みゆきの『ファイト!』の歌詞をもう一度書いておきます。才能あるアーティストの歌は、時が流れ、時代が変わっても人の心を打つものだとあらためて感じました。塾生以外の皆さんも、ぜひダウンロードしてこの曲を聴いてみてください。さびの部分はコマーシャルにもなったそうですが、口ずさみながら試験会場へと向かいましょう。さあ、ファイトだ!

『ファイト!』

あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている
ガキのくせにと頬を打たれ 少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる
私、本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で
ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い
私、驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった
ただ恐くて逃げました 私の敵は 私です
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく
光ってるのは傷ついてはがれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね
やせこけて そんなにやせこけて魚たちのぼってゆく
勝つか負けるかそれはわからない それでもとにかく闘いの
出場通知を抱きしめて あいつは海になりました
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
薄情もんが田舎の町に あと足で砂ばかけるって言われてさ
出てくならおまえの身内も住めんようにしちゃるって言われてさ
うっかり燃やしたことにしてやっぱり燃やせんかったこの切符
あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京ゆき
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
あたし男だったらよかったわ 力ずくで男の思うままに
ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ
ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく
諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
ファイト!

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