未来塾通信 4


N 先生、教職試験合格!

■大分西高校や別府鶴見ヶ丘高校等で英語の講師をしながら教職試験に挑戦していたN先生から、先日合格の知らせを受け取りました。何十倍という難関を見事に突破されて本当によかったですね。教師になる夢を最後まであきらめないでがんばった甲斐がありました。

西高校に勤務している同僚の先生の紹介で、N先生が私の塾を訪ねて来られたのは去年の9月でした。話を聞くと、年齢的に今年が最後のチャンスかもしれない、背水の陣で臨むのでマンツーマンで指導してもらえないだろうかということでした。 自宅のある別府から車で通いたいとのことでした。昼間なら何とか都合がつくのですが、昼間は先生も学校ですし私は夕方から塾があります。時間的に無理だと思ったのですが、先生の熱意に押されて、高校 3年生のクラスでよかったらいっしょに勉強しませんかと申し上げたところ、「それで結構です。お願いします」と、即座に返事が返ってきました。私は驚きました。

高校の講師をしている先生が塾に通うのは勇気がいると思います。しかも、10歳も年下の生徒と同じクラスで授業を受けるのです。指名されて答えられなければ恥ずかしいという意識もあるはずです。実際、答えに窮したことが何度かありました。レベルの高い質問でしたが、悔しそうな表情をされていたのを思い出します。生徒のいないところで厳しい注文もしました。採点しなければならない生徒の答案を抱えて来られたときもあったようです。大変だったに違いありません。それでも、高校の授業が終わった後、車で週2回、坂ノ市まで通って来てくれました。塾の授業が終わるのが10時半頃。それから別府まで帰らなければなりません。途中、大分の椎迫から通っていた上野丘高校の生徒会長だったU君を家まで送って、自宅に帰り着くのは深夜の12時を過ぎることもあったそうです。同じく高校の先生をされているご主人の理解があったからできたことだと思います。

私の指導が先生の合格に結びついたのでしょうか。そうであればうれしいのですが。何より、先生自身が努力したからこそ合格されたのだと思います。先生には、英作文と英文読解の簡単なテストを受けてもらった後、以下の3点をアドバイスして授業に臨んでもらいました。

(1)指定したテキストを何度も何度も細部まで暗記するくらいに読み込むこと。最低5回は繰り返さないと、テキストから得た知識を応用する力はつかないこと。

(2)そのテキストを読みながら頭に浮かんだ疑問点を、どんなささいなことでもいいから書きとめておいて質問すること。

(3)語彙力を付けるために毎日一定の時間を取ること。
 
最後にN先生にお礼を言わねばなりません。私が塾の教師をしていて最もうれしい瞬間は、知識の伝達がうまくいったときでも、その結果として生徒が合格したときでもありません。塾で学ぶことをきっかけに、自分の生き方を発見するための精神的な場を生徒たちに提供できたと実感するときです。夜、同世代の若者が何人か集まり、厳しい勉強を通じて「同じ釜の飯を食う」経験をする。そのこと自体がほかの何物にも代えがたい自立への契機となるのです。目標をはっきり定めて学習している生徒と、ただ高偏差値の大学を目指すだけで進路が二転三転する生徒との対照的な姿勢は、他の生徒にあらためて自分の将来を考える契機を与え、自立への意志を芽生えさせます。「何のために勉強するのか」という、ウザくて、かったるい問いに向き合うことなく、ゲームと割り切って受験を乗り越えたとしても、いずれ「何のために働くのか」「何のために生きるのか」という問いを突きつけられることになります。その意味でも、教職を目指して努力しているN先生の姿は、生徒にとってよい刺激となり、職業人としての将来を考えるまたとない機会になったと思います。ありがとうございました。これからの活躍をお祈りしています。